ご挨拶 私たちの設計に対する想い

 住宅に「希望」のすべてを取り入れることは、敷地や法規の問題、そして予算などによる制約がある以上、事実上は不可能です。また、それぞれの条件によって、その実現レベルも千差万別。
 どんな場合でも、お客様には「希望」をもれなく吐き出してもらい、そこから削る項目を話し合います。途中で考えが変わることもあるでしょうし、削りたくない要素があっても諦めなければならないことも当然出てきます。最初から「どうせ実現できない」と思われていることでも、あえて「もう希望はないですか?」と尋ね、口に出してもらうようにしています。
 その上で「できるかもしれない」ものは追及し、代替案がある場合はそれを探求し、可能性のないものはその理由を説明して「それは無理です」と、なるべくはっきり言及するよう心がけています。事前に「希望」に対する「現実」を納得していただいてから着手するほうが、互い気持ちがすっきりとするのではないかと考えるからです。
 あとから「こうしておけばよかった」と思うものを極力少なくすることは、とても重要なことですが、さらに言えば「家」というものを「人と同じく不完全なもの」と捉えていただきたいと考えています。

「未知の将来」と「今」について

 家庭環境の変化に追従できる家にすることを狙いすぎても、将来どんな生活環境になるかは未知の話です。「未知の将来」のために「今」を犠牲にしないように、ただ少なくとも「今考えられうる将来」には、柔軟に対応できる程度の配慮が必要になってきます。家族の時流に合わせて、ときには大胆な手術(リフォーム)が必要になることも理解していただきたいと思います。
 最近ではお客様のほうが住宅に対する知識が豊富で、こちらが勉強になることが良くあります。今後も話し合いの中で刺激し合いながら、自然に出来上がっていく「形」を大切にしたいと考えています。

(有)若林建築設計事務所 代表取締役 若林 直